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はじめに

「うちの子、全然勉強してくれない」「どうやってやる気を出させたらいいの？」——そんな保護者の悩みはとても多く聞かれます。一方で、お子さん自身は「勉強しなきゃいけないのはわかってる。でもやる気が出ない」「親に言われるとやる気なくなる」と感じていることも少なくありません。

この“温度差”は、親子関係をギクシャクさせ、ますます勉強から遠ざかる原因になることも。

この記事では、「勉強してほしい保護者」と「勉強したくない子ども」の間にあるギャップを埋めるための具体的な方法を紹介します。家庭でできる工夫や、声かけのポイント、子どもの本音への理解などをもとに、“学ぶことを前向きにする家庭環境”をつくるヒントをお届けします。

1. 子どもが勉強を嫌がる本当の理由

まず大切なのは、子どもがなぜ勉強したくないのか、その根本にある「理由」を知ることです。

主な理由：

• 勉強の意味がわからない（何のためにやるのか不明）

• 自分は勉強ができないと思い込んでいる（失敗経験や劣等感）

• ゲームやSNSのほうが楽しい（すぐに満足感が得られる）

• 勉強が「親のため」になっている（やらされ感）

保護者ができること：

• 「なんで勉強がいやなの？」と責めずに問いかける

• 勉強以外で成功体験を積ませて「自分にもできる」と思える機会をつくる

• 勉強＝誰かに強制されるもの という認識を変えていく

2. 「勉強しなさい」が逆効果な理由

「勉強しなさい」「そろそろ机に向かいなさい」といった声かけは、多くの家庭で日常的に聞かれるフレーズです。しかし、この言葉がかえって逆効果になるケースが多いのも事実です。

■ なぜ「勉強しなさい」が逆効果なのか？

1. 命令口調に聞こえ、反発心を生む
   子どもは思春期に入ると、特に「自分の意思を大事にしたい」という気持ちが強まります。そんなときに、上から目線で命令されると、「やらされている」「コントロールされている」と感じ、反発したくなるのは自然な心理です。

2. “自分で考えて動く力”を奪ってしまう
   勉強は、本来「自分で考え、選び、取り組む」ものです。親が毎回指示すると、子どもは「考えなくても誰かが指示してくれる」と学習し、主体的な学びの姿勢が育ちにくくなります。

3. 「勉強＝親のため」という認識が強まる
   「親がうるさいからやる」「怒られるからやる」といった動機は短期的には機能しても、長期的には“学ぶ意味”を見失わせます。最悪の場合、「勉強＝苦痛」「勉強＝親に管理されるもの」と捉えるようになってしまいます。

■ じゃあ、どう声をかければいい？

「勉強しなさい」と言わずに、子ども自身が“やろう”と思えるような言葉がけに変えていくことが大切です。

ここでは、子どもの自主性を引き出すための3つの問いかけ型アプローチをご紹介します。

①「今日は何を頑張る予定？」

この声かけは、“自分で計画を立てて行動する”ことを促します。問いかけられることで、子どもは「自分で考えなきゃ」という意識になります。強制感がないため、自然と前向きな気持ちで答えやすくなります。

✅ポイント：あくまで「計画を聞く」だけで、アドバイスは控えめに。

②「この間がんばってたね。またやってみる？」

過去の成功体験をさりげなく思い出させて、「またやってみようかな」という気持ちを引き出す声かけです。親に認められたという安心感が、次の行動へのエネルギーになります。

✅ポイント：「がんばってた」の内容はできるだけ具体的に。

③「今どこまで進んでる？」

進捗を尋ねるだけでも、「自分がどこまでやれているか」を振り返るきっかけになります。この質問には、プレッシャーが少なく、自然と“次にやること”を考えさせる効果があります。

✅ポイント：「ちゃんと進んでるの？」というニュアンスにならないよう、穏やかな口調で。

■ 声かけのコツは「問いかけ」「共感」「承認」

子どもにとって、もっともやる気が出るのは、「自分のことをわかってくれている」と感じたときです。

• 「今日は疲れてそうだね、何か手伝えることある？」

• 「今週、ずっと頑張ってるの見てたよ」

• 「自分で決めてやってるの、かっこいいね」

こうした共感や承認の言葉は、何よりの応援になります。「勉強しなさい」という言葉を封印して、**“気持ちを支える関わり方”**にシフトしていくことで、子どもは少しずつ、自分から机に向かうようになります。

3. 目標を“親子で一緒に”立てる

子どもが自発的に勉強に取り組むためには、「自分ごと」として目標を持つことが不可欠です。ですが、「どうせ頑張っても意味がない」「目標がよくわからない」と感じている子どもも多くいます。

そんな時は、ぜひ親子で一緒に目標を設定する時間を持ちましょう。
一人で目標を立てるよりも、親の理解と応援が感じられることで、子どもは安心して挑戦できます。

■ 目標設定のポイント

① 短期的かつ達成しやすい目標から始める

いきなり大きな目標だと、達成できなかったときにやる気を失いやすいです。
例えば、

• 「今週は英単語を10個覚える」

• 「今日は数学の問題を3問解く」

これくらいのハードルなら、子どもも「できそう！」と思えます。

② 子ども自身に決めさせる

親が一方的に決めると、押し付けに感じてしまいます。
「どの教科を頑張りたい？」「今日は何をやってみたい？」と問いかけ、子どもが自分で目標を選べるようにします。
自分で決めた目標には責任感が生まれやすいです。

③ 達成できたら、しっかり認めて褒める

達成感は次のやる気につながります。
「できたね！すごい！」と声に出すことが大切です。
もし目標を達成できなくても、「挑戦したこと自体が偉いよ」と努力を評価しましょう。

■ 目標設定の流れの例

1. 話し合いの時間を作る
   リラックスした雰囲気で、「今の勉強の調子はどう？」「何が苦手？」など、子どもの気持ちを聞く。

2. 小さな目標を一緒に考える
   親がサポートしながら、「じゃあ今週はここをやってみようか？」と提案。

3. 目標を書き出す
   ノートやホワイトボードに目標を書き、視覚化する。

4. 進捗をチェックしてフィードバック
   毎日・毎週、どうだったかを振り返り、達成したことを褒める。

■ 目標は「成功体験」の基盤に

目標をクリアするたびに、子どもは「できた」という自信を積み重ねます。
その自信がさらなるチャレンジを生み、やる気を持続させるのです。

また、親子で目標設定する時間は、子どもの気持ちに寄り添い、理解を深める大切なコミュニケーションの機会にもなります。
子どもが感じている不安や悩みを聞き出し、励ますことで、親への信頼感も高まります。

■ まとめ

目標設定は、ただの「計画作り」ではなく、子どものやる気を引き出す大切なプロセスです。
親子で話し合いながら、子どもの「できそう！」を積み重ねていきましょう。

大きな夢も、小さな一歩から始まります。
その一歩を親子で踏み出すことが、未来の成功の鍵となるのです。

4. 「勉強を楽しむ」視点を家庭に

勉強＝つらいものというイメージを変える工夫も必要です。

楽しさを取り入れる工夫：

• クイズ形式で問題を出す

• 学んだことを家族で話題にする

• ポイント制で達成を可視化する（例：1時間で10ポイント、100ポイントでご褒美）

家庭内で「勉強＝楽しい」「できるようになるって気持ちいい」という雰囲気をつくっていくことで、自然と学習に前向きになります。

5. 勉強以外の部分で信頼関係を築く

どんなに優れた勉強法や声かけのテクニックを使っても、土台となる信頼関係がなければ、子どもには響きません。
「この人は自分の味方だ」「わかってくれてる」——そう感じているからこそ、子どもは大人の言葉に耳を傾けるのです。

そのためには、勉強以外のところでの関わり方が決定的に重要です。

■ 勉強以外の会話が「安心感」をつくる

保護者がつい「宿題やった？」「テストどうだった？」など“勉強のことばかり”を聞いてしまうのはよくあることです。
しかし、子どもからすると、「自分は勉強しているときしか関心を持たれていない」と感じてしまうこともあります。

それでは、**無意識に「勉強できる＝愛される」「できない＝価値がない」**というメッセージを受け取ってしまう危険性があります。

■ 信頼関係を深めるための行動例

① 子どもの“好き”を共有する

• ゲーム、アニメ、スポーツ、推しの話でもOK

• 一緒に楽しんだり、少し知識を持って会話に入ってみる

例：
「最近そのゲーム、どこまで進んだの？」
「このキャラってどんなところが好きなの？」

→ 勉強以外の話が増えることで、「この人は自分を丸ごと見てくれている」と感じさせます。

② 一緒に笑う時間を持つ

• 家族でテレビを見て笑う

• 一緒に料理する、散歩に行くなど日常のふれあい

• 「勉強しない時間」を責めず、共有する

→ 「あなたと一緒にいるときは楽しい」と思える時間が信頼の種になります。

③ 勉強に波があっても責めない

勉強をしない日が続いても、感情的に責めたり、人格を否定するような言葉は避けましょう。

NG例：
✕「どうしてやらないの？」
✕「やる気ないならもう知らない」

代わりに、
「最近ちょっと疲れてる？」
「休むことも大事だよ」

→ “条件付きの愛”にならないように注意し、存在そのものを認める言葉を大切にします。

④ 成績ではなく、努力や姿勢を褒める

たとえ結果が出なくても、「頑張っていたこと」「工夫していたこと」を見つけて言葉にします。

例：
「この前、自分から机に向かってたね。すごいと思ったよ」
「わからないところを質問できたのは勇気あることだよね」

→ 結果主義ではない“無条件の応援”が信頼の土台になります。

■ 信頼関係は、勉強の前提条件

親子の関係が良好で、「勉強してもしなくても大切にされている」と子どもが感じていれば、やがて自らの意志で行動する力が育ちます。

子どもが本音を話してくれるようになるのも、普段の“何気ない雑談”や安心できる雰囲気があるからこそです。

■ まとめ：まずは「勉強していない時間」に寄り添う

勉強のやる気を育てたいなら、
勉強の話を減らしてみることも、時には有効です。

• 勉強しない日も笑って過ごす

• 一緒にゲームやテレビを見る

• 好きなことを教えてもらう

• 結果が出なくても「そばにいるよ」と伝える

こうした積み重ねが、子どもにとって「この人になら、弱音を吐いてもいい」「話を聞いてもらえる」と感じさせ、やがて勉強に向かう意欲の土台となります。

信頼関係は、すべての学びのスタートライン。
まずは“勉強していない時間”を大切にすることから始めてみましょう。

6. 勉強の「スタート地点」を下げる

やる気が出ない、机に向かうのが面倒、何から手をつければいいか分からない——。
こうした子どもに対して最も効果的なのは、「小さく始める」ことです。つまり、“勉強のスタート地点をとにかく低く設定する”というアプローチです。

■ なぜスタート地点を下げるのが有効なのか？

心理学では、**「作業興奮」**という現象が知られています。これは、「最初の一歩さえ踏み出せば、だんだんとやる気が湧いてくる」という脳の性質です。

つまり、やる気がなくても、とにかく始めさえすれば、脳は自然と“集中モード”に切り替わってくれるのです。

■ 具体的な声かけ例・工夫

ここでは、勉強のハードルを下げる工夫を、実践的な声かけとともに紹介します。

1. 「5分だけでいいからやってみよう」

→ 時間のハードルを下げる

「30分勉強しよう」では重いですが、「5分だけ」なら気軽に始められます。タイマーをセットして、「ピピッと鳴るまででいいよ」と伝えると、心理的にかなり楽になります。

✅ ポイント：「5分だけでもOK」と、本当に終わってよいことを保証する

2. 「1問だけ解いてみようか」

→ 量のハードルを下げる

問題集を開くのが億劫な子には、「1ページ」ではなく「1問」から始めるのが有効です。一度鉛筆を持って解き始めれば、その流れで2問目、3問目と続けられることが多いです。

✅ ポイント：結果として多く進んでも「すごい！」と褒める

3. 「〇〇の前に1つだけやってみよう」

→ 日常の行動とセットにする

「ご飯の前に1問だけ」「お風呂の前に英単語1つだけ」など、生活のルーティンと勉強を“セット”にすることで、勉強の存在が自然な流れに組み込まれます。

✅ ポイント：継続しやすく、習慣化にもつながる

4. 「一緒に1問だけやってみようか」

→ 親も“巻き込まれる側”になる

親が「やらせる人」ではなく「一緒にやる人」になるだけで、子どもは構えなくなります。特に低学年や勉強への抵抗感が強い子には、効果的なアプローチです。

✅ ポイント：「一緒に」スタートし、「あとは任せるね」と手放すバランスも大切

■ スタートが軽いと、続けるハードルも下がる

スタート地点を低く設定すると、「気づけば続いていた」「いつの間にか集中していた」という好循環が生まれます。

たとえば：

• 5分 → 10分 → 15分と、自然に時間が伸びていく

• 1問だけのつもりが、10問まで進む

• 「終わらせたい」という意欲が生まれる

「やる気が出たら始めよう」ではなく、**「始めたらやる気が出る」**という視点の転換が、子どもの行動を変えるカギです。

■ まとめ：勉強の第一歩を“とにかく軽く”

子どもに「勉強しなさい」と言う前に、まずは**“一歩踏み出せる工夫”**を用意してあげましょう。

• 小さく始める

• 一緒にやる

• 習慣に乗せる

• 成果を褒める

こうしたアプローチを重ねていけば、「自分から始められる子」へと、少しずつ変わっていきます。

大切なのは、「どうやらなきゃ」と言うより、「どう始めればやれるか」を一緒に考えてあげることです。

7. 親自身が「学ぶ姿勢」を見せる

子どもは親の背中を見ています。

学ぶ姿を見せる例：

• 本を読んでいる姿を見せる

• 家計簿をつけながら「これも勉強だね」と話す

• 資格試験などにチャレンジしてみる

親も何かを学んでいる姿勢を見せることで、「勉強って大人になっても大事なものなんだ」と伝えることができます。

8. 勉強時間よりも「学習習慣」を育てる

大切なのは、長時間勉強することよりも、毎日少しずつでも机に向かう習慣をつけることです。

習慣化のコツ：

• 毎日決まった時間に学習タイムを設ける

• 勉強の前にルーティンをつくる（飲み物を用意する、音楽を流す など）

• 「今日はここまでやった」と記録を残す

習慣は、意志よりも強い力を持っています。

9. 最後に：親も完璧でなくていい

「どうしてうまくいかないんだろう」「私の声かけが悪かったのかな」

そう悩むこともあるかもしれません。でも、親だって人間です。うまくいかない日があっても当然。

大切なのは、子どもにとって“安全な存在”であり続けること。努力の結果ではなく、存在そのものを認める関わりが、何よりのエネルギーになります。

まとめ

• 子どものやる気を引き出すには、まず「気持ち」を理解すること

• 命令よりも「問いかけ」で、主体性を育てる

• 小さな成功体験を積ませることで、自信とやる気が育つ

• 家庭で「学びは楽しい」という空気をつくる

• 信頼関係は、勉強以外の関わりから生まれる

親の想いと子どもの気持ちがすれ違わないために、ぜひこのヒントを日々の中に取り入れてみてください。

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